2008-01-23

居酒屋にて思わぬ酒と会う(1) 『麓井 輝ら星の如く 吟醸生 おりがらみ』

先日行った居酒屋さんで、思わぬ季節限定酒に会いました。

その名は「麓井 輝ら星の如く 吟醸生 おりがらみ」(麓井酒造株式会社 山形県酒田市麓字横道」。

麓井酒造さんは、全国新酒鑑評会で何度も金賞を受賞している蔵元さんです。
酒造りでは、普通酒から吟醸酒まで大半で生酛(きもと)*造りを採用しているそうです。

おりがらみ」というのは、お酒を搾ったあと濁りを除くために寝かせる滓下げ(おりさげ)という工程を経ずに瓶詰めしたものです。
生酒(なまざけ)」は、加熱殺菌をしないで熟成、濾過後瓶詰めする製法です。

麹(こうじ)も酵母も乳酸菌も生きたままなので、時間がたつと発酵が進み味が変わってしまいます。
だから、仕込んだ直後の新鮮なうちしかいただけません。
みずみずしく香りも華やかですが、熟成した深み・旨みやまろみは期待できないタイプの酒といえます。


グラスに並々注いでもらうと、乳白というよりほんのり黄味がかっています。
グラスに鼻を近づけると、フレッシュな香りがほのかに漂います。

口に含んでみると、思いのほか発泡感はなく、舌先にわずかに酸味と炭酸の刺激を感じます。
そのまま舌の上で転がしていると、まずまろやかな甘みを感じ、次に舌の奥でわずかな辛味がやってきます。渋み、雑味は全くありません。
そして、米と麹の含み香*が鼻に抜けていきます。

かつてのにごり酒はグラス1杯で充分と感じてしまうほど個性の強いものが多かったような記憶がありました。
でも、このおりがらみは、ちょうど始まったばかりのNHK大河ドラマ「篤姫」で宮﨑あおいが演じている「於一(おかつ)」のような、素直で真っ直ぐな品の良さを感じさせてくれます。

*生酛(きもと): 酒造りの過程で、酵母を増やす(酒母造り/酛立て)際に雑菌が増えないよう乳酸菌を加え、酒に適度な酸味と腰を与える。
これを人の手で添加せず、酒蔵に住み着いている「蔵つき酵母」を自然に取り込み乳酸を作らせる伝統的な製法。
所要期間は約1ヶ月かかり、人工的に加える場合に比べ約2倍の期間がかかるほか、乳酸のつきが悪ければ腐敗のリスクが高まるため、時間・労力がかかる製法。

*含み香: 酒を口に含んで、しばらく舌で転がしているときに感じる香り。

DATA:
「麓井 輝ら星の如く 吟醸生 おりがらみ」
使用米; (麹)山田錦 (掛)美山錦
精米歩合; 50%
日本酒度; +3
酸度; 1.4
甘辛度; -0.3
アルコール度; 15%以上16%未満

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